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先進事例紹介

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CASE.08

Summer Mystery Night -虎ノ門ヒルズの“不可思議”な夜-

森タワー、ビジネスタワー、レジデンシャルタワー、ステーションタワーの4棟で構成される東京・虎ノ門ヒルズ。2026年の夏、森タワー2階のオーバル広場を舞台に、プロジェクションマッピング作品『カオの惑星』を中心とした複合イベント『Summer Mystery Night-虎ノ門ヒルズの“不可思議”な夜-』を実施。ステーションタワーのTOKYO NODEで開催中のアートイベントと呼応させることで、世界的アーティストの世界観を街全体の夜の体験へと広げる試みが生まれました。この企画を主導した森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部の井上瑞希さんに、プロジェクトの背景や制作の工夫、そして今後の展望について語ってもらいました。

実施団体:森ビル株式会社
エリア:東京都港区
実施時期:2026年8月7日(金)〜8月16日(日)〔10日間〕

アートで街をつなぎ、虎ノ門ヒルズの夏の夜を都市体験に変える

森タワー、ビジネスタワー、レジデンシャルタワー、ステーションタワーの4棟で構成される東京・虎ノ門ヒルズ。2026年の夏、森タワー2階のオーバル広場を舞台に、プロジェクションマッピング作品『カオの惑星』を中心とした複合イベント『Summer Mystery Night-虎ノ門ヒルズの“不可思議”な夜-』を実施。ステーションタワーのTOKYO NODEで開催中のアートイベントと呼応させることで、世界的アーティストの世界観を街全体の夜の体験へと広げる試みが生まれました。この企画を主導した森ビル株式会社 タウンマネジメント事業部の井上瑞希さんに、プロジェクトの背景や制作の工夫、そして今後の展望について語ってもらいました。

夏のナイトタイムイベントとアート展が結びついた企画の出発点

虎ノ門ヒルズでは、年間を通して来街者に向けた都市体験型のイベントを実施しています。しかし近年の猛暑や台風の影響から、夏の屋外イベントに対しては慎重にならざるを得ない状況が続いていました。「暑い中でも、夜の時間帯を活用して来街者に街の体験を楽しんでいただく方法はないかと、数年前から模索を続けていました」と井上さんは振り返ります。

そうした中、2026年の夏にステーションタワーのTOKYO NODEで『トニー・アウスラー:技術と霊知のはざま〜魔術、メディア、アート〜』展が予定されていたことが、企画の起点になりました。トニー・アウスラーは、1980年代から立体物に映像を投影する手法で知られるメディアアートの先駆者です。

「アウスラーの作品性を知る中で、プロジェクションマッピングを夏の夜のイベントとして取り入れるのは面白いのではないかと考えました。世界的な巨匠が個展を開いている期間に、街の屋外体験としてプロジェクションマッピングを展開する。これは虎ノ門ヒルズと親和性のある企画になると期待が高まりました」。 もともと虎ノ門ヒルズでは、TOKYO NODEに集まる世界的なクリエイターやアーティストの作品を街に点在させていく取り組みを進めていました。夏の夜の課題と、展覧会から生まれるクリエイティブの力を街全体に広げたいという構想が結びついたことで、プロジェクトは動き出しました。

街の輪郭を歩いて実感してもらうための場所選定と回遊設計

虎ノ門ヒルズは4棟の高層ビルを中心に構成される広大な街ですが、個々の施設は認知されていても、「どこからどこまでが虎ノ門ヒルズなのか」という全体の輪郭が来街者に浸透しきっていないという課題がありました。
そこで企画の核には、プロジェクションマッピングの鑑賞だけにとどまらない、街全体を使った回遊の仕組みを落とし込むことにしました。

「プロジェクションマッピングの会場を中心に、虎ノ門ヒルズの内側も外側も回遊していただくことで、街の広がりを歩いて直感的に捉えていただきたかったのです」と井上さんは語ります。

回遊の仕掛けとして、子ども向けのワークショップを企画。参加する子どもたちが提灯を工作し、それを持って展覧会を鑑賞した後、プロジェクションマッピング会場を経由して、夏祭り会場まで通りをパレードするという、街を横断する動線が設計されました。
プロジェクションマッピングの会場選定にあたっては、「雨や台風のリスクを極力排除できる屋根があり、かつ観客を集められるキャパシティがある場所」という条件を設定しました。さらに自社施設内の美術館やギャラリーの運営を通じてつながりのあったプロジェクターメーカーや映像投影のプロフェッショナル企業にも同行を依頼し、現地を一緒に歩きながら映像の投影に適した場所を絞り込んでいきました。

見上げて、寝転んで、ビールを片手に。
オーバル広場ならではの鑑賞体験

オーバル広場の大きな庇(ひさし)に投影された作品は、映像作家・山内祥太氏による『カオの惑星』。トニー・アウスラーの活動に敬意を寄せる山内氏を映像作家として迎え、投影作品が具体化していきました。

『カオの惑星』では、人間の内面に潜む感情や欲望、善悪や美醜の境界が溶け合い、複数のキメラ的な生命体が互いに会話する不思議な世界が、庇の裏面いっぱいに展開されます。 この作品の鑑賞体験は、虎ノ門ヒルズならではの空間特性と密接に結びついていました。観客は庇の下に入り、上を見上げて鑑賞する形になります。もともと別の企画で敷かれていた人工芝をそのまま活かし、寝転びながら見上げるというユニークな鑑賞スタイルも可能にしました。施設側からはレジャーシートの貸し出しも行い、親子で地面に座りながら映像を楽しむ姿や、仕事帰りのワーカーが足を止めて見上げる姿が生まれました。

「映像を正面から見るのではなく、見上げて鑑賞するというのは珍しい体験だったと思います。お客様の好きな見方で、好きな場所から楽しんでいただけたのは面白かったですね」と井上さんは語ります。

会場近くにはビールを提供するキッチンカーも配置。プロジェクションマッピングの映像を見上げながら、夏の夜のビアガーデンのような体験が自然に生まれました。
10日間の開催期間中、延べ約5,000人が来場。当初想定していた3,000人を大きく上回る結果となりました。普段は通勤動線として通り過ぎるだけだった場所で、突然映像を見つけて驚き、足を止める方も多く見られたといいます。

時間帯、音響、想定外のコスト。初めてだからこそ見えた課題

今回のイベントは、森ビルとして構造物へプロジェクションマッピングを実施する初めての挑戦でした。過去には木への映像投影やタワー外装の一部を使った作品展開などの事例はありましたが、建造物の形状に合わせて投影するプロジェクションマッピングは、社内でも前例がなかったといいます。「街の中でどこの場所を使えるのか、どこに投影すれば楽しんでいただける体験につなげられるのか。まさに手探り状態からのスタートでした」と井上さんは振り返ります。

初めての取り組みゆえに、事業費の見積もりには未知の部分が多くありました。最終的にプロジェクターの台数変更が生じたほか、当初見込んでいなかったテスト投影の費用、台風による機材のずれに対応するテクニカルスタッフの常駐費、さらには投影映像と呼応する空間全体のライティング演出を追加した環境演出費など、想定外の経費が発生したそうです。 「映像の面白さを見ていただくだけではなく、オーバル広場という空間全体を夏の一つの体験として楽しんでいただきたかった。その目的を果たすために、周辺の空間演出まで含めて企画を膨らませていった結果、当初の計画にはなかった費用が積み上がりました」と井上さんは率直に語ります。

もう一つの大きな気づきは、音響の重要性でした。作品の中ではキャラクター同士が会話しており、その声が聞こえるかどうかで体験の質が大きく変わります。「企画当初は音響のことは含めていなかったのですが、やってみてわかったのは、プロジェクションマッピングは映像だけの体験ではなく、音と映像が合わさった五感の体験なんだということ。来年は音に関してはもっとしっかり取り組みたいと思っています」。 こうした課題に対して井上さんは「次回は東京観光財団が提供する専門家派遣制度の活用なども検討して、音響設計や投影テストの段階からブラッシュアップしていきたい」と仰っていました。

SNSでの発信と、通勤動線からの「偶然の出会い」

プロモーションはSNSを中心に展開しました。Instagramではイベント全体の概要を伝えるチラシ投稿に加えて、ワークショップの体験内容や楽しみ方を映像リールで発信。PR会社と連携した施策により、インプレッション数は想定の2〜3倍を記録しました。
さらに、イベント期間中の実際の映像を使った事後の投稿も丁寧に行い、「こんな取り組みを行なった」という記録としての発信にも注力しました。「事前の集客PRだけでなく、事後にしっかり伝えることで、次の期待感につなげたかった」と井上さんは説明します。
また、プロジェクションマッピング会場が日常の通勤動線上にあったことも、集客に独自の効果をもたらしました。帰宅途中のワーカーが突然の映像に驚いて足を止めたり、土日には近隣住民が犬の散歩がてら立ち寄ったり、外国人のファミリーが提灯ワークショップに参加するなど、意図的に訪れた層とは異なる「偶然の出会い」が数多く生まれたといいます。 平日の夜は30〜40代のワーカーが中心でしたが、土日には近隣のファミリー層や、夕涼みに訪れた住民の姿も。時間帯や曜日によって客層が変わるという、立地ならではの多層的な集客が実現しました。

TOKYO NODEから街全体へ。アートが広がる拠点としての未来

井上さんは今後の展望について、「プロジェクションマッピングという技術を使って、虎ノ門ヒルズでしかできない体験を作り続けていきたい」と語ります。

そのポイントとなりそうなのが、虎ノ門ヒルズの情報発信拠点『TOKYO NODE』の存在です。「外からコンテンツを持ってくるだけではなく、TOKYO NODEに集まるクリエイティブやアーティストの才能を街全体に広げていく。それが虎ノ門ヒルズにしかできない大きな役割だと考えています」。来年以降も、TOKYO NODEでの展覧会やアートプロジェクトと連動する形でプロジェクションマッピングの展開を検討していく方針です。 「いつ来ても何か面白い発見がある」——そんな街を目指すための一歩として、今回の取り組みは大きな手応えを残しました。次年度以降さらにブラッシュアップしながら、このイベントを育てていきたいとのことでした。

※助成対象経費等はプロジェクションマッピング等促進支援事業助成金交付要綱及び募集要領をご確認ください。

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